ウェアラブルテクノロジーでヘルスケアを変革

スマートウォッチやスマートリングに組み込まれた光学技術が、医療グレードのバイタルサインモニタリングをサポートできるようになりました。

消費者向けウェアラブルがどのように医療モニタリングを実現するか

20世紀、そして21世紀の現在までのほとんどの間、ヘルスケアは専門の場所で、特定の時間に、プロフェッショナルによって行われるサービスであり、通常はラボによって提供される検査結果を基に、病院や診療所で行われています。 


今世紀これからの4分の1は、根本的な変化が見られることになります。新しいウェアラブルデバイスの登場で、患者が自宅や職場で、さらにはベッドで眠っているときも、24時間年中無休でモニタリング、診断、治療を継続的に行うことが可能になります。 


このテクノロジーは、医療における新しい「4P」パラダイムを可能にする重要なイネーブラーの1つです。「4P」とは、医療システムが「個別化された」(Personalized)、「予測可能な」(Predictive)、「予防的」(Preventive)、「参加型」(Participatory)であるとき、多くの場合、医療専門家からのインプットがより少なく、より低コストで、人々により良い結果をもたらすことができるという考え方です。 


この4Pモデルは、急速に高齢化が進む人口動態の時限爆弾に直面している工業化された先進国にとって、非常に魅力的なものです。高齢者の複雑な医療ニーズは、退職者に対する労働者の割合が低下していることで縮小している税基盤を脅かすものとなっています。これら先進国は、次が可能なウェアラブルテクノロジーから多くを得ることができます。

  • 病気が重篤化する前に病気の兆候を検出する
  • 手術やその他医学的介入後の患者に対する24時間年中無休のモニタリングを提供し、後の合併症リスクを低減する
  • 個別化された診断データを生成して生活上の選択に情報を提供することで、個人が心臓病や糖尿病などの疾病リスクを低減し、より長い健康寿命を享受できるようにする

医療グレードのウェアラブルのための高度な光学技術

スマートウォッチやスマートリング、イヤホン、スマートパッチなど、新世代の消費者向けウェアラブルデバイスによる医療機能の提供は、高度な光半導体テクノロジー:可視スペクトルまたは近赤外スペクトルの厳密に指定された波長で発光するLEDと、エミッタと同じ波長に調整された超高感度光検出器(フォトダイオード)によるものです。 


健康管理機能を備えたウェアラブル製品は、通常フォトダイオードからの信号を増幅・デジタル化するための専用のアナログフロントエンド(AFE)を含んでいます。さらにAFEは、心臓の状態や異常を検出するための心電図(ECG)やガルバニック皮膚反応(GSR)、生体電気インピーダンスといった電気測定の信号調整を実行します。 


光学システムは、光電式容積脈波記録法(PPG)と呼ばれる手法を使用して、体内の組織で散乱して血管内のヘモグロビンによって部分的に吸収される光を手首や薬指、耳で測定することにより、さまざまなバイタルサインを導き出すことができます。PPGを使用して、アルゴリズムは以下を正確に判定することができます。 

  • 心拍数
  • 心拍数の変動
  • 血中酸素飽和度 (SpO2)

 

深部体温を測定するams OSRAMの温度センサからの入力と、皮膚に接触する電極からの心電図を組み合わせることで、ウェアラブルデバイスは装着者の長期的な健康状態に関する詳細な情報を提供することができ、いかなる症状にも気づいていない健康に見える人々であっても、初期段階の疾病マーカーが明らかになる可能性があります。

医療モニタリングと診断の変革

これは、医療科学にとって新しい機能です。これまで、患者の検査やモニタリングは、特定時点でのスナップショットに限られており、臨床環境の人工的な条件下で測定されていました。昼夜を問わずすべての時間にわたり、患者が通常の生活をしている間に取得される長時間の一連のデータを分析する機能は、診断の正確さと知見に変革をもたらします。


また、これは消費者によるウェアラブルデバイスの使用における完全な変化を示すものでもあります。今日、ウェアラブルデバイスは一般的にライフスタイルアクセサリと見なされており、装着者がどの程度アクティブであったか(歩数計)、あるいは運動がどの程度の強度であったか(概算心拍数の測定)を示すことができますが、これは健康状態の医学的評価には寄与することができません。 


現在出現している新世代のウェアラブルテクノロジーは、十分に正確で信頼性が高く、医療診断と治療に情報を提供するために使用できるものです。当然、これには医療規格の遵守と、米国食品医薬品局(FDA)や中国国家薬品監督管理局(NMPA)といった規制当局からの承認が必要となります。 


医療グレードの消費者向けウェアラブル製品におけるこの新たな発展の最前線で、ams OSRAMの製品は、これらのデバイスで使用されるセンサ部品の品質と信頼性の基準を打ち立てるものです。


ams OSRAMはすでに、医療機器業界向け半導体製品の信頼できるサプライヤーであり、市場リーダーでもあります。例えば、医療画像処理のためのコンピュータ断層撮影(CT)やデジタルX線センサでも、優れた精度、高速取得、低ノイズ、超低消費電力を提供しています。

 

例えばAS7057およびAS7058 AFE、SFH 7018 LEDSFH 2705およびSFH 2706フォトダイオード、AS6221温度センサなどのams OSRAMによるPPGソリューションは、医療用途をサポートするウェアラブルデバイスに必要とされる機能性とパフォーマンスを提供します。これは、ams OSRAMによって開発されたスマートウォッチリファレンスデザインで示されています。


ams OSRAMは内部研究において、SpO2リファレンスクリップ、病院で使用される血中酸素モニター、心拍数測定用チェストストラップからの測定値をスマートウォッチリファレンスデザインの測定データと比較しました。この比較によると、ams OSRAMが開発したアルゴリズムを使用するスマートウォッチは、関連規格の仕様に準拠していることが示されています。


当然、どのお客様も独自の設計実装をテストする必要がありますが、当社のリファレンスデザインによって、お客様はams OSRAMのコンポーネントを使用したスマートウォッチであればバイタルサイン測定に関する規格準拠を確実に達成することができます。

また、AIソフトウェアがより洗練されたものになるに伴い、生理学的マーカーの検出がより正確で信頼できるものになることが見込まれます。光学センサや電気センサ技術とAIを組み合わせることで何が可能になるのか、ams OSRAMのパートナーであり、低消費電力AIプロセッサメーカーであるAmbiq社のheartKIT™ AIリファレンスモデルライブラリで、そのビジョンを見て取ることができます。heartKITシステムは、ams OSRAMのセンサによって取得されるバイタルサイン測定を使用しています。

 

 

消費者向けウェアラブルがもたらすもの

消費者向けウェアラブルデバイスでバイタルサインを正確に測定する機能は、デジタル化された現代のヘルスケアにとってすでに革命的なステップとなっています。しかし、将来的にはより多くのバイタルサイン追跡の余地があり、真に個別化された予防医療という4Pモデルのビジョンを実現します。将来、スマートウォッチやスマートリングで、ストレス度の監視、月経周期の追跡、さらには血中アルコール濃度のモニタリングさえも可能になるかもしれません。これらはすべて、ams OSRAMのコンポーネントによって実行されるPPG、温度・電気・スペクトルセンシングテクノロジーの魔法によるものです。 


したがって、個別化医療の未来は、便利で快適に長期間装着できる消費者向けデバイスによって可能になります。 

 

このテクノロジーがどのように医療とヘルスケアを変革し始めているか、そして人々がより長く健康的に生活するためにそれがどのような可能性をもたらすのかを目の当たりにすることはとてもエキサイティングです。


そして、高度な光半導体技術と深い専門知識を思いのままに活用できるams OSRAMは、この次世代ウェアラブル製品を開発しているデバイスメーカーにとって理想的なパートナーとなります。

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